クライアントや取引先から「源泉徴収税を差し引いて支払います」といわれ、疑問に思った経験はありませんか?クラウドソーシングサイトでは、源泉徴収される場合とされない場合があります。源泉徴収される案件の場合、手取りが減って損をした気分を感じる方もいるでしょう。
源泉徴収は税金の支払い忘れや徴収漏れを防ぐ制度であり、本来納めるべき額より多く払った場合は確定申告をすると還付を受けることができます。
今回は、源泉徴収は必要か悩んでいる人のためにわかりやすく解説します。
本記事を読むと以下の悩みが解決します
- フリーランスの源泉徴収はどのくらいひかれるの?
- すべての作業報酬に対して源泉徴収される?
- そもそも源泉徴収について詳しくわからない
ではさっそく、みていきましょう。
源泉徴収とは
源泉徴収とは、取引先やクライアントが先に税金分を差し引いて報酬を支払う制度のことを指します。差し引かれるのは「所得税」になり、言い換えると「先払い所得税のシステム」です。その所得税を差し引いて支払われることを「源泉徴収」といいます。
源泉徴収税という税があるわけでなく、この一連の流れが源泉徴収の仕組みになっているので理解しておきましょう。
会社員の場合なら会社が給与から源泉徴収をしてくれるので、原則として確定申告は必要ありません。しかしフリーランスの場合は、クライアントにより源泉徴収されるので、自分で確定申告をする必要があります。
確定申告をすると源泉徴収で払いすぎた所得税は還付され、足りなければ追加で納税する義務が発生します。
フリーランスの源泉徴収される職種
代表的な源泉徴収の対象は、以下の8つです。
- 原稿または講演料など
- 弁護士・会計士・司法書士などの特定の資格を所持する人へ支払う報酬
- 社会保険診療報酬支払基金が払う診療報酬
- プロ野球・サッカー・テニス選手、モデル、外交員などに払う報酬
- 芸能関係や芸能プロダクションをおこなう個人へ払う報酬
- 宴会などの接待をおこなう業務に対する報酬(コンパニオン・キャバレー・ホステスなど)
- プロ野球選手の契約金など、薬務の提供を決める際に支払われる契約金
- 宣伝広告のための利益や馬主に払う競馬の賞金
上記のように、対象であると判断できる場合はよいですが、判断できない場合は案件ごとにクライアントへ確認が必要です。
源泉徴収が対象になる報酬や料金
源泉徴収は法人が個人へ支払う場合は必要ですが、個人から個人へ支払う場合は不要です。
しかし、個人事業主でも下記の条件にあてはまる人は源泉徴収を納める必要があります。
- 個人経営から法人経営にした
- 雇用形態を問わず従業員を雇っている
- 青色事業専従者に給与の支払いがある
上記の項目以外にも源泉徴収の対象になる場合があり、具体的には以下の通りです。
- 報酬を受け取る側が、個人か法人かわからない場合、団体として独立していることが明らかの場合は法人として扱い、そうでなければ個人として扱われる
- 謝礼、研究費、取材費、車代の名称で支払われていても、報酬・料金と同じであれば源泉徴収の扱いになる。しかし報酬を支払う側が、交通機関やホテル、旅館等へ必要な範囲の交通費や宿泊費を直接支払った場合は、報酬に含めなくてもよい
- 金銭だけではなく、物品や経済的利益で支払う場合も報酬・料金等に含まれる
源泉徴収や税について不明な点がある場合、国税庁のホームページよりチャット形式でいつでも相談できます。
よくある税の質問についてもまとめられているので、フリーランスの人は一度目を通しておくとよいでしょう。
源泉徴収の計算式
源泉徴収の金額は案件ごとの報酬額で変わります。
こちらでは、1回に支払う金額が100万円以下と100万円以上の場合で解説します。
一度に払われる報酬が100万円以下の場合
100万円以下の場合は、一律10.21%です。(所得税10%+復興特別所得税0.21%)
税率が中途半端な数字の理由は、東日本大震災の復興特別税の0.21%が追加されているためです。
源泉徴収税の計算式は、支払金額×10.21%。
(例)原稿料が1万円の源泉徴収税の金額は、10,000円×10.21%=1,021円
税率だけだとイメージがわかないという人は、計算式にあてはめて金額をチェックしてみましょう。
また、源泉徴収の対象額は原則として「消費税込」の金額になります。
一度に払われる報酬が100万円以上の場合
100万円以上の計算式は、(支払金額-100万円)×20.42%+ 102,100円。
復興特別税の0.42%が含まれているので、税率が半端になりますです。
(例)原稿料が110万円の場合、(110万-100万)×20.42%+102,100円=12万2,520円
報酬が100万円以上になると、100万円以下のときよりも差引額が大きくなります。
クライアントが法人なら請求書に源泉徴収を記載する
クライアント側が支払調書を発行してくれるといいのですが、支払調書には発行が義務付けられていません。すべての取引先が発行してくれるわけではないので覚えておきましょう。フリーランスの人は毎回(毎月)請求書を発行する際は源泉徴収税を記載してください。
では実際、どのような流れで記載すればよいのでしょうか。
フリーランスが源泉徴収を管理する、3ステップをみてみましょう。
- 請求書を発行したら、源泉徴収額を記録
- 確定申告で使用するので、スプレットシートやエクセルに保存
- そのデータをもとに、毎年2/16〜3/15の確定申告の際に源泉徴収額を記入
案件が多くなると管理が大変になるので、紙やノートよりもデータで保存するとよいでしょう。源泉徴収額を記録しておくと、確定申告がスムーズにおこなえます。
フリーランスの確定申告にかんしては、こちらの記事で紹介しています。
1年を超えて海外に在住のフリーランスは源泉徴収不要
1年以上の海外在住のフリーランスが現地で作業した分の報酬は、源泉徴収されません。国の法律で、海外に住んでいる人は「非移住者」とみなされ源泉徴収の対象にならないからです。単純に住民票で判断するわけではなく、国税庁が定義する「非移住者」の定義をもとに判断されます。
主な定義は以下の4つです。
- 職業
- 資産
- 家族の移住状況
- 国籍など
世界中を渡り歩いている人でも、国内に生活する拠点があれば「移住者」とみなされ税金を納める義務が発生します。
源泉徴収の納付期限
源泉徴収した所得税は、給料や報酬を払った月の翌月10日までに国に納めなければいけません。しかし、給料を払っている人数が常に10人以下の場合は「納期の特例」を受けることができます。
「納期の特例」とは、源泉徴収した所得税を年に2回まとめて納付できる制度のことを指します。
(例)
1月~6月までに源泉徴収した分の支払い:同年7月10日まで
7月~12月までに源泉徴収した分の支払い:翌年1月20日まで
(納付期限が土日にあたる場合は、その翌日)
特例を受けるには、「源泉徴収税の納期の特例の承認に関する申請」を提出する必要があります。国税庁ホームページから様式をダウンロードできるので、チェックしてください。
源泉徴収の仕組みや流れ、基本的な知識を身につけよう
源泉徴収については、対象となる報酬や業務内容について把握しなければなりません。報酬が発生する際は、報酬額にあてはめて差し引かれる金額を毎回チェックしましょう。
源泉徴収を払いすぎてしまった場合は、確定申告をすると還付されるので心配することはありません。税金を細かく気にする機会はあまりないかもしれませんが、基本的な知識は身につけておくのは大切です。
源泉徴収の仕組みや流れ・正しい申告の仕方をおさえることが大切です。本記事を参考に、税金の申告漏れや二重払いにならないよう報酬や給料はしっかり管理しましょう。
【参考文献】
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